シェーン・ローリーは、今週のロイヤルポートラッシュ大会で2度目の全英オープン制覇を飾ったあかつきには、その祝勝会は前回の2倍以上に盛大なものにすると宣言した。
とはいえ、最終日18番ホールのフェアウェーを歩くローリーに送られた割れんばかりの喝采のシーンや、同夜の遅くまで続いたウィニングパーティー、その後も1週間以上と続いたとされる勝利を祝う宴を超えるほどの盛大な祝勝会を行うのは困難必須である。
それほど、148回大会でのローリーの勝利の意味は特大で、歴史に残るものだった。北アイルランドの地に約70年ぶりにメジャー大会が戻ってきて、ゴルフと言うスポーツの門戸を再び開いたとも言える特別なチャンピオンシップになった。
そんな状況で、アイルランド島出身の選手が頂点に立ち、歴史あるメジャーで王者に輝いた。いかにもポエティカルで、ドラマチックな展開で幕を閉じたのである。
あの瞬間を目の当たりにしたゴルフファンは大いに圧巻されたが、あれから6年が経過した今も、当時のプレーをハイライトで見返すと再び興奮してしまう。大きなプレッシャーの中でも平静を保ち勝利を手繰り寄せたその精神力は、彼のゴルファーとしての才能を改めて認識させるものだった。
無論、戦いは最後まで決して楽なものではなかった。
ポートラッシュの18番ホールのティグラウンドに立ったローリーは、激しい向かい風を顔面に受け、雨を目いっぱいに吸い込んだキャップからは雨水がしたたり落ちていた。厳しいコンディションのなか、ローリーは頬をふくらませ、ボールに向き合い、人生で最も重要なスイングをする準備を整えた。
最終日は2位に4打差でスタートし、最終ホール時点での差は6打まで開いていた。負ける可能性はほぼゼロの状況だ。
しかし舞台は全英オープンの72ホール目。世界最古のメジャーでは、過去に思いもよらないドラマが演じられてきた。1999年のジャン・バンデベルデ、さらに古くは約30センチのショートパットを外したダグ・サンダースのケースもある。考えてもいないところで特大のドラマが巻き起こる。そう、ジ・オープンでは何も保証されてはいないのだ。
ロイヤルポートラッシュの最終ホールも容易ではなく、左へ打ち込めばOBになってしまう。しかし2019年のローリーは違った。彼を待っていたのは特別な瞬間だった。
ティーショットを見事に打ち抜き、風を切り裂って雨の中を踊るように抜けていったボールはフェアウェーの中心に収まった。その瞬間、危険な状況から脱出して祝祭が始まる準備が整ったのである。
直後にローリーと、彼のキャディを務めるボー・マーティンを迎えた光景は壮観なものだった。グリーンへ向かう途中の2人は、コースに響き渡る歌やチャントに包まれた。ギャラリーは終日続いたひどい雨のおかげでびしょ濡れだったが、気にする人間は誰一人いなかった。
「自分にこんなことが起こるなんて信じられなかった」と、ローリーは当時振り返っている。
「12か月前には、カットを逃して車の中で泣いていた自分がいた。一方、今回は、まるで幽体離脱をしたような感覚だ。明朝に起きた時、いったいどんな気持ちなのか、待ちきれない。とてつもないことになりそうだ」
圧巻のゴルフを見せてくれたローリーのプレー同様、彼を待っていた祝勝パーティーも当然のように盛大なものだった。車に荷物を詰めこんでコースを後にすると、故郷アイルランドの首都ダブリンへと向かい、家族や友人、さらに多くのセレブやお祭り好きの誰もかれもと一緒にその夜を楽しんだ。
また翌日には、出身地に戻って同様のパーティーを繰り返すのだった。
あれから6年が経ったが、ローリーの唯一のメジャータイトルは148回目のジ・オープンのみ。その間、優勝の数も多いとはいえず、2022年の欧州ツアーのBMW PGA選手権と、昨年ロリー・マキロイと組んで制したダブルス競技のチューリッヒクラシックだけだ。とはいえ優勝回数は大幅に増えてはない一方で、彼のゴルフは以前に増して安定感を誇る。
「もうかなり以前のことだとはわかっているし、あのパフォーマンスのおかげで、今週何か特別なことをしてもらえるという権利を与えるわけではない」
「初日の朝は自分の気持ちをしっかり持ち、全力で取り組むのみ。あとは何が起きるか、自分の目で確認するしかない」
「直近のメジャーは2戦連続で予選落ちしたけど、大きな大会では、いつもある程度のプレーはできていると感じているし、それを何年も続けてきた」
「今年はかなり自分のゴルフが安定してきているし、何度か勝つチャンスもあった。実際に勝てなかったのは非常に残念だけど、それでもまだチャンスはあるはずだ。自分を取り戻し、勝利を手にする機会を作りたい」
本人だけではない。パーティー好きのアイルランド人たちは、ローリーの2度目の戴冠に期待を寄せている。